レンゲソウ【蓮華草】

 山梨県田富町・4月20日撮影

 

 春の田園に懐かしい面影

見渡すかぎりのレンゲ畑は、ちょっと昔まではどこにでも見られ、春ののどかな田園風景であった。子供たちが遊び、犬がかけまわっていた。
農村で育ったわけではなかったが、10分も歩けば、田や畑があった。遊び疲れた春の夕暮れ、女の子からもらったレンゲやクローバーの首飾りがどことなくうれしくて、いつまでも捨てられなかった。

田のレンゲソウは、もちろん緑肥とするために前年に種をまく。根には根粒バクテリアが寄生して、小さな丸いこぶをいくつもつくる。この根粒バクテリアが空気中の窒素を固定するので、そのまま田にすきこめば、緑肥となり、自然のうちに土を肥やしてくれる。また、葉や茎は牛などの家畜の飼料になった。

レンゲソウは、親しみがあり、春の花の代表のひとつといえるのだろうが、日本人とのかかわりはそれほど長くない。中国から渡ってきた外来植物で、江戸時代に飼料や食料として広まったという。
江戸の中頃に書かれた貝原益軒の『大和本草』には、子どもがこの花の茎をくくり合わせて玩具とする、と記されている。

最近では、地域おこしや観光も兼ねて、レンゲ畑が一部の地域で復活しつつある。でも、遠景に住宅が写り込んだり、まだらなレンゲ畑ではどうも雰囲気が出ない。やはり一面の赤紫色の花のじゅうたんが懐かしい。
そんなわけで、真上から見たクローズアップの写真となってしまった。おぼろげな面影を、たわいもなく懐かしみながら。

(2000.4.18)

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