アキノキリンソウ 【 秋の麒麟草 】

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▲山梨県増穂町・10月1日撮影

 

 動物の顔をもった植物たち

植物には、動物の名前のついたものがあっておもしろい。
思いつくままに挙げても、イヌタデ、ネコノメソウ、キツネノマゴ、ブタクサ、クマイチゴ、トラノオ、ホトトギス、カエデ(蛙手)、キンギョソウ、マツムシソウ……と、動物や鳥、魚や虫などの顔を持った植物たちがかなりいる。なかには、カニコウモリなどという欲張りなのまでいる。

アキノキリンソウのキリンが、アフリカのキリンなのか、聖人が生まれる前兆として現れるという中国の想像上の麒麟なのか、はたまたまったく動物とは関係のない命名なのか、はっきりとはしていないようだ。
しかし、初夏から夏に山や海岸で黄色い花を咲かせるキリンソウ(ベンケイソウ科)に、花の色と感じがよく似ていて、まるっきり別のなかまなのに、こちらは秋に花が咲くので、アキノキリンソウと呼ばれるようになったといわれている。

ところが、私の場合、秋の野山でまっすぐに立った黄金色のこの花の穂を見かけると、どうしても首の長いキリンを思い起こしてしまう。
とんでもない連想なのだが、子供たちがまだ小さかったころ、よく動物園に行った。どの子もキリンが好きだった。そして野山もよくいっしょに歩いた。

子供たちは、黄色い花を見かければ、なんでも「あっ、タンポポだ」と叫んだ。おいおい……、「それはアキノキリンソウっていうんだよ」。山の高いところだったら、「これはミヤマアキノキリンソウだな」と言えば、いかにももっともらしく、少々いい格好ができた。ずいぶん楽な手を使ったものだ。

そして、こう話す。空からキリンが飛んできて、でかいウンチをぽたぽた垂らすと、その中にたねが入っていて、そこからこの花が咲くんだ。ほら、臭いかいでごらん。キリンのウンコの臭いがするだろ、と。口から出まかせ嘘八百を適当に聞かせた。
子供たちは、きょとんとした後、「ウソだ〜」と言いながらも、あの首の長いキリンに、あるとき羽がはえ、空を飛ぶと思い込んだふしもある。

もちろん後から、ビールのラベルの絵をとくと見せ、これが麒麟っていうんだぞと、教えてやるのだが、時すでに遅し。子供たちはただ怪訝そうな顔をするばかり。
そして、「あっ、お父さんもう酔ってる〜」と、あいなる。

万事がそんな調子だったから、わが子供たちの頭の中はどこかちょっとズレている。というか、学習効果が行き届きすぎて、今では思わぬところでこちらが一杯食わされる。
そして、ヘヘヘッ…、「わたしにも一杯ちょうだい」と、グビーと一杯キリンを飲まれてしまうのである。

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