ワレモコウ【吾木香、吾亦紅】

 長野県霧ヶ峰八島湿原・9月撮影

 

「吾も亦(また)紅なり」

あたかも枯れた実のように見せている。枝先についた赤茶色の楕円形のものを花と見るのはやはりむずかしい。でも、ワレモコウのれっきとした花である。花弁こそないが赤い萼片のある小さな花が集まっている。

野や山の草原に秋風が吹くころ、渋い臙脂色を点々と散りばめるように咲き始め、侘びた風情をかもしだす。地味な色合いと丸い形が好まれ、生け花や茶花に秋草とともに活けられる。

いにしえに、紅い花を集めるよう命ぜられた者が、ワレモコウを採り忘れたところ、傍らから「吾も亦(また)紅なり」と、花は控えめに主張したという。

 吾亦紅すすきかるかや秋くさの
   さびしききわみ君におくらむ (若山牧水)

(2000.10.4)

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