フクジュソウ福寿草

▲長野県北安曇郡 姫川源流・4月14日撮影

 

黄金色のパラボラアンテナ
正月を祝う鉢物にフクジュソウの花がある。“福寿草”と書き、別名を元日草ともいう。めでたい花である。

ギリシャ神話やアイヌ伝説にも登場する花だが、初春を告げる正月の飾りとして親しんだのは、江戸の町人だった。
文化から天保のころには、特にその 栽培がさかんになり、園芸品種は100種以上も作り出されたという。栽培地の秩父や関東山地の園芸家たちは、町人たちの目をうばう珍しい品種をこぞって改良したのだろう。そして毎年、江戸の町へと初春を告げる花たちをかつぎ下ったことが想像される。

今、3月の秩父の山々を訪れると、黄金色の花びらを、パラボラアンテナのように広げた野生のフクジュソウに出会える。園芸家たちの手にかからなかった花たちが、雪間や林野でやわらかい春の陽ざしを一身に浴びている。
一世を風靡した珍しい園芸品種の多くは、今ではもう見られない。

関西では、鈴鹿山脈の藤原岳が自生地として有名だが、まだ行っていない。
自生の大群落が保護されている長野県の姫川源流には、毎年季節を変えて足を運ぶ。
源流はふつふつと湧き出る泉となって、川はまさにここに発している。4月上旬に訪れれば、あたり一面に黄色のフクジュソウの花が咲きほほえんでいる。
この花の花言葉は「思い出」「回想」。

 (1999年・更新)

 

一覧へ

inserted by FC2 system