クロマツ 【 黒松 】

静岡県下田市・1月撮影

 

 

 

不老長寿、志操堅固

白い砂浜に、緑の枝を広げた松原が続く。白砂青松と称される、日本的な海岸風景である。海岸のマツはクロマツが多く、山のマツ林はアカマツが普通である。
松の木は、風雪にめげず、常に緑の葉をつけていることから、儒教的思想とも相まって、“不老長寿”、“志操堅固”の象徴とされてきた。また、“松竹梅”の組み合わせにも入れられ、めでたい植物として、いまも門松に用いられている。松は、日本と日本人を象徴するような樹木となったが、桜とは対照的なイメージをもっている。

お正月バージョンということで、不老長寿などとつい書いてしまったが、現在、素直にマツの木を長寿の木と思える人は少ないだろう。
寿命は杉の木にはるか及ばないし、全国いたるところで進んでいるマツ枯れ現象を目の当たりにすると、どうやら言うほどに丈夫な木ではなさそうなこともわかる。
戦後全国各地で目立ちはじめたマツの木が赤茶色に枯れる現象は、長い間マツクイムシがマツの枝や幹をかじって枯らすのだと考えられてきた。ところが実はそうではなく、マツクイムシの一種のマツノマダラカミキリの体の中に寄生しているマツノザイセンチュウが真犯人であることがわかった。
この寄生虫は大きさが1mm以下だが、1匹のカミキリムシの体の中に1万匹以上も寄生していて、カミキリムシが木をかじったあとからマツの木の中に入りこみ、マツの樹脂細胞をこわしていく。そのためマツは水分を吸い上げることができなくなって、枯れてしまうのである。

私の住まいに近い雑木林でも、太くてまだしっかりとしたマツの木がよく切り倒されている。マツノザイセンチュウが入りこんだ木なのだろう。

(2001.1.5)

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