クサボケ【草木瓜】
山梨県増穂町・3月撮影
草むらにのどかな緋色の花
庭や公園によく植えられるボケの花はなじみがあるが、野山に自生しているクサボケはあまり知られていない。
高さが50cmほどにしかならず、“草”の名は付いていても、れっきとした木である。
地方によっては、シドウメ、シドミ、ジナシなどとも呼ぶ。春の訪れとともに、日あたりのよい林の縁や土手の草むらなどで、直径2〜3cmの5弁の花を咲かせる。よく目立つこの緋色の花を見かけると、のどかでうららかな春がすぐそこまで来ているのを感じる。
同じ株に雄花と雌花が咲く。雌花のあとには、黄緑色で3〜4cmになる球形の実ができる。かたくて食べられるような代物ではないが、よい香りがあるので果実酒に使われる。クサボケの果実酒は、山の観光地などで土産物として売られていることがある。口の狭いビンの中に、その口よりもはるかに大きい実がいくつか入っているのを見かけると、どうやって入れたのだろうと、不思議になる。どことなく愉快にもなる。
花が終わったら、実がまだ小さなうちに、あらかじめその枝をビンの中に差し込んでおくのだという。なるほど。
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