オオイヌノフグリ【大犬の錘】
東京都内・3月撮影
早春の野に咲く“コバルトの星々”
身近な野原や道ばたで、いち早く春のきざしをおしえてくれる花が、このオオイヌノフグリだろう。
わずか7〜10mmほどの小さな花は、全国どこにでも見られ、ありきたりの春の雑草なのかもしれない。
でも、コバルトブルーの可憐な花には、たかが雑草といい切れない美しさと物語が秘められている。オオイヌノフグリの故郷は遠いペルシャの国。東洋の東の島々に渡来したのも明治の初めという。
鮮やかなコバルト色の花には、地中海の海やペルシャの青い空の色が今に映し出されているようでならない。3月、この花が群落をなす春の野は、コバルト色の星々にちりばめられる。そんな日当たりのよい野に寝そべり、星々を手にとろうと触れれば、花はそのままほろりと散ってしまう。
春の野の午睡の夢には、十分すぎるほど可憐で、はるかな旅路の物語へといざなってくれる。ただただ残念なのは、フグリ(陰嚢)という名前だけである。犬のフグリに形が似ているのは、花の後にできる実であって、ソレはこの写真には写っていませ〜ん。
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