ヒトリシズカ【一人静】  4月  

山梨県韮崎市・4月17日撮影

 

 静御前にちなんで

野山の花との出会いには、ふた通りがあるように思う。

ひとつは、実際に美しい花を見て、なんという名の花だろうと、図鑑を調べたり、人に聞いたりして、後から名前を知るケース。
もうひとつは、それとは逆に、先に名前を知って、その花の実物を見たくて野山を探し歩き、ついにその花と出会うというケースである。

出会いのおもむきは異なるが、どちらにもそれなりのよさがある。でも、ヒトリシズカの花は、その後者であることが多いだろう。まず名前に惹かれてしまうのである。私の場合もそうだった。
義経の愛妾静御前の白拍子姿にちなんだその名には、哀しくも美しい響きが秘められている。

白い花穂は、4枚の葉の元から、その名の通りひとつだけ立つ。白い糸のように見えるのは雄しべで、花弁も萼もないのだから、花としては変わっている。
4月から5月ころ、雑木林の下などによく生えている。珍しい花ではなく、北海道から九州まで分布しているから、春先の野や山を歩いていれば、よく見ることができる。草の高さは、写真のころでは10cmくらいだが、育つと20cmくらいにもなる。

ひとつの花だけが、ひとり静かにぽつんと咲くということはほとんどなく、数本が集まって生えていることが多い。けっこうにぎやかに、楽しそうに咲いているようにも見える。

似た花としては、草丈がふたまわりほど大きく、5月ごろに花のさくフタリシズカ(二人静)がある。

 

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