イカリソウ 【 錨草 】

春よ、もう一度

イカリソウは、4月から5月ころに、丘陵や山裾の木陰で、うすい赤紫色や黄色、ときに白色の花を咲かせる。
花は4枚の花弁が下を向いて十文字に広がっているが、1つ1つの花弁の形は、先が細く閉じた筒のような形になって突き出している。
このように奇抜な形とつくりを、言葉だけで説明するのは、とてもじゃないけど、無理というものだ。だから結局、何か別の物にたとえることになる。花は船がおろす錨のような形をしている、といえばそれでかなり足りる。たとえるということは、なんとも楽で、便利である。まあ、だから「錨草」と名付けられたのだろうが…。
この花は、名前も覚えやすいせいか、野山で一度出会うと、そう簡単に忘れられない花になる。庭に植える人も多い。
しかし、この花の名をさらに有名にしているのは、なんといっても薬草としての効き目だろう。漢方ではイカリソウの生薬を「淫羊かく」という。昔から、強精強壮薬として知られている。茎や葉を酒に浸し、薬用酒としても珍重されてきた。
イカリソウの名についても、これを飲むと、ナニが怒り猛るからその名がついた、という説まである。
私も、いずれ必要を感じたときには、「春よ、もう一度」とばかり、試してみることになるのかもしれないが…。だが、それを必要と感じたときは、そもそも本当はそういうことを必要としなくなっているはずなのだから、「必要」とは、「不必要」になったとき、はじめて「必要」だと感じる、ということなのだろうか。なんともわけの分からない、しつっこいもののようだ。

(2001.4.27更新)

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