野にありて優雅
十二単(じゅうにひとえ)は平安時代の女官の正装である。春の野の花にこれと同じ名の草があるとは、何とも優雅な感じがする。 本州と四国にだけ生える日本の特産種だが、べつに珍しい植物というわけではない。とはいえ、いざ探すとなると意外に見つからなかったりするからおもしろい。 4月から5月ころに、丘陵地の林や野原の日当たりのよい土手のようなところで、白か淡い紫色の穂状の花を咲かせ、草丈は10〜20cmほどになる。段状に重なって咲くろうたけた花のようすを、重ね着した十二単の装束に見立てた名だという。しかし、実際の花は毛深くて、名ほどには高貴なあでやかさは感じられないような気もする。それでも、春の野歩きでは、一度ならず見たい花のひとつだろう。
(2002.4.9更新) |