垣根を通り越す
野原や道ばたで、カキドオシの可憐な花が咲いている。うす紫色の花は長さ1〜2cmと小さい。でも、虫めがねでクローズアップしてみると、濃い紅色の斑紋は鮮やかで、意外なマクロの世界に驚かされる。 春の野草には、小さな花が多いから、散策に虫めがねは必需品である。というか、すでに老眼鏡が必携になっている。これを忘れたら、それこそ目も当てられない。ところが、不思議なことに遠くはやたらよく見える。山の稜線などで、木が何本立っているとか、点のような登山者がいま何人いるとか、実によく見える。街では、これからは見えすぎてときどき透けて見えるくらいだから、楽しい。オット、話がそれた。 可憐な花を咲かせたカキドオシも、初夏になると茎をグングン伸ばし、垣根を越えるほどに繁茂する。花の時期からは想像もつかないが、蔓植物なのである。そんな様子から“垣通し”の名が付いたという。 別名というか俗称をカントリソウ(疳取草)といい、小児の疳(かん)によいという。花のころの全草を刈り取って乾燥させ、それを煎じてお茶代わりに飲ませるのだという。自分で採集して作るとなると、ずいぶん気の長い話になるが、陽気もよくなってきたし、お弁当でも持って薬草摘みに出かけてみれば、それだけでもいくらかスッキリして疳の虫などどこかへ消えてしまうというものかも知れない。
(2002.4.16更新) |