百花の王
ボタンは昔から“百花の王”と呼ばれてきた。原産地の中国では、花王、百花王、富貴花などというそうだ。 日本へは、奈良時代の聖武天皇のころに渡来したという。元来は根を漢方薬に用いたのだが、何しろ花がきれいなので、平安時代ごろから観賞用に植えられ、江戸時代にはさかんに品種改良がほどこされたという。そして豪華絢爛な品種がさかんに生み出されてきた。 それにつけても、この花の大輪の八重咲きなどに見入っていると、花言葉の「壮麗」などという美しさより、むしろ「妖艶」ともいえる艶めかしさを見せつけられているようでならない。花びらがひとつまたひとつと散り始めるころ、その感を強くする。散る花びらがありながら、同じひとつの花の中に、これからさらに開き反り返ろうとする花びらが同居している。花は開花と落花を同時に進行させている。それは花のもつ性のせめぎ合いなのだろう。それこそが妖艶なるものの秘めた姿なのかも知れない。
(2002.5.11更新) |