初夏の風をほしいまま
小学唱歌に「うの花のにほふ垣根に…」と歌われた花はウツギで、その純白の花にはすがすがしさと、素朴な清潔感がある。 山野で見かけるウツギのなかまは意外に種類が多い。花の色が白から紅色へと変わるニシキウツギやハコネウツギは有名で、庭木などとしても植えられる。驚くほどに濃い赤一色のヤブウツギは、野山ではことのほか目をひく。また、おもに日本海側に多いタニウツギは、5〜6月ごろに山の斜面や谷間で、ピンク色やうすい紅色の花を咲かせる。 いずれの花も漏斗形で長さが3cmほどと小さいが、花の色とその変化によって印象はずいぶんちがう。なかでも、タニウツギのひかえめな花色は、初夏のあふれんばかりの陽射しと青葉の中では、むしろ美しく映え、爽やかな風と光をほしいままにしている。
(2002.5.19更新) |