ゴゼンタチバナ【御前橘】

▲山梨県北岳・7月13日撮影

シラビソの林に清楚な白花

本州中部の高山では、標高が1500mくらいから亜高山帯が始まる。
ここでは、シラビソやコメツガなどの常緑の針葉樹林が山肌をおおい、昼でも薄暗い。
そんな針葉樹林の林床や縁に、ゴゼンタチバナはよく小さな群落をつくる。
7月ともなると、放射状に広がった6枚の葉の中央に、清楚な白い十字形の花をつける。
夏の森は静寂につつまれている。

草丈は15cmほどで、花の直径は1.5cmくらい。白い花びらのように見えるのは、萼の変化した苞であって、真ん中に20個ほどの小さな花が集まっている。自然も時として人をあざむく。
葉が4枚の株は、なぜか花をつけない。まだ若すぎるのだろうか。

急な樹林帯の登りで、この花はいつも清々しい小休止を与えてくれる。
花が終わると、秋には数個の真っ赤な実をつける。この花の群落に出会うと、またいつの日にか、秋にこの山を訪れるだろうと予感する。

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