クロユリ【黒百合】

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 山形県月山・7月8日撮影

哀しい愛の伝説

いよいよ夏山シーズンの到来。高山のお花畑や岩場では、厳しい風雪に耐えた高山植物が可憐な花をいっせいに咲かせ、短い夏を謳歌する。

高山植物のなかで、よく知られたものにクロユリの花がある。“黒百合は恋の花”と歌にうたわれたり、哀しい伝説にも登場する。
ヤマユリのような大きな花ではなく、草丈は10〜30cm、花も直径3cmほどで小さく、暗褐紫色をしている。本州中部以北の高山から北海道の低地にまで分布している。
7月ころ、高山の草むらのようなところで、ひっそりとうつむきかげんに咲いているから、気づかずに帰る人も多いのかも知れない。

クロユリの伝説には、愛の哀しさが秘められている。越中富山の大守・佐々成政は、若く美しい腰元の早百合を寵愛していたが、美男の小姓との仲を疑い、その嫉妬心から二人と早百合の一族をも殺した。身に覚えのない早百合は、「私の亡霊が立山に黒百合を咲かせたとき、佐々家は滅びるでしょう」と叫びながら息たえたという。
その後、成政は北野の大茶会で、秀吉の北の政所(正妻)に取り入ろうと、立山に咲く珍しいクロユリの花を献上したところ、不吉な花として逆に怒りをかった。これも若く美しい淀君への嫉妬心のなせるわざだったようだが、それからというもの、佐々家は衰運の一途をたどる。そして、早百合の予言どおり、成政は切腹、家も滅びた。
やはりクロユリの花は成政を恨みながら死んだ早百合の化身なのだろうか。花言葉は“執念深さ”…。

(2000.7.15)

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