オニユリとキアゲハ 【 鬼百合 】


山梨県南巨摩郡 ・ 8月1日撮影

 

吸蜜

山里の農家では、庭先や畑のわきに花を植えることを忘れない。しかし最近は過疎化が進み、田は放棄され、畑は植林の進んでいるところが多い。だから、ほったらかしにされたひょんな草むらや林のすみで、ご先祖様が植えたと思われるオニユリなどが、それは見事に咲いているのに出会ったりする。
木蔭からそんな花を見ていると、キアゲハやクロアゲハが訪れ、吸蜜していく。多くのアゲハチョウの仲間の雄は、だいたい一定のコースを飛び、そのコースは蝶道と呼ばれている。このオニユリの花も蝶道に入っていたのだろう。雄は雌を求めてここを飛び、雌に出会うと、そのまわりをせわしなく飛びまわりながら追いかける。求愛である。
ところが、交尾のすんでいる雌は、節操が固く、そんなものには目もくれずに飛び去る。交尾がまだの乙女なら、雄を品定めするかのように空高く舞い上がったりし、気に入れば着地して静かな短い交尾をする。そして何事もなかったかのように別れ、飛んでいく。あとには、橙色のオニユリの花が、真夏の陽ざしを受けているだけである。 

(2001.8.5更新)

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