キキョウ 【 桔梗 】


大阪市 ・9月撮影 (栽培)

 

きりりとした色気

9月は、秋の草花が競うように花を咲かせる。秋草はどことなく先を急いでいるように見えてならない。ゆく季節を惜しんでいる暇などないのかも知れない。山の草原は、もう秋の風情一色に染まっている。
秋の七草を詠んだ『万葉集』で、朝貌とよばれている植物が現在のキキョウだといわれている。花の形は鐘形だが、正面から見ると均整のとれた五角の星形が印象的で、美しく冴えた青紫色と相まって、きりりとした色気がある。
昔から、日本人は秋草好みで、春の自然より秋の自然を好み、尊んだ。日本の伝統の中にも、秋の情緒は色濃く染みこんでいる。

ところで、キキョウの花の咲き方にはおもしろいしくみがある。雄しべが成長して花粉が出るころ、同じ花の雌しべはまだ未熱で受粉できない。そして、雄しべが枯れ落ちてから、めしべは成熟して先が五つに割れ、受粉可能になる。これは一つの花の中で自家受粉しないために、自然が長い進化の歴史の中でつくり上げた巧みなしくみなのだろう。  

  きりきりしゃんとして咲く桔梗かな (一茶)

(2001.9.28更新)

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