コスモス【 秋桜 】
▲長野県浅間高原・10月4日撮影
日本の秋になじむ
コスモスの原産地はメキシコである。アメリカ大陸発見後にヨーロッパに渡り、日本には幕末に渡来して明治時代に広まったという。
外来植物でありながら、日本の秋の風情にはなぜかよくなじんでいる。
背丈は大きくなるのに華奢で、派手なようでいて地味でもあり、どこか日本的な感じさえする。昭和のはじめころ、ある新聞社が当時の著名人7人から一人一花の推薦で、「新・秋の七草」を選んだ。コスモスを推したのは菊池寛であった。
新・秋の七草とは、ハゲイトウ(長谷川時雨)、コスモス(菊池寛)、ヒガンバナ(斉藤茂吉)、赤まんま(高浜虚子)、菊(牧野富太郎)、オシロイバナ(与謝野晶子)、シュウカイドウ(永井荷風)であった。コスモスはいまでは、高原の道路沿いや線路わき、駅の構内から農家の庭先、都会の公園や校庭にまで、それはもういたるところで日本の秋を飾っている。
和名を「秋桜」というのだから、もっともなことかも知れない。このコスモス、台風でも来れば、すぐに倒れたり折れたりして人の気を引く。でも、なかなか丈夫で、知らんぷりしていればそのまま花も咲かせる。繁殖力も旺盛で、一度庭にでも植えたら、こぼれ落ちた種で、翌年からはコスモスだらけになってしまう。けっこう手のやけるやつである。
引き抜いたり立ち起こしたりと世話するとき、決まってあの懐かしい独特の青臭いにおいが漂ってくる。そして、しばらくはそのにおいが手や鼻に残っている。*
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