キンモクセイ【 金木犀 】

▲東京都東村山市・10月7日撮影

 狂おしくも甘い香り

甘く強い香りが、どこからともなく漂ってくる。秋も半ばの公園や庭先などで、キンモクセイの花の香りが、ふと私をとらえると、狂おしいほどに離さない。暗い夜道ではなおさらで、はて、どこからだろう…と、あたりを見まわすが、よく分からない。昼間にでもまたそこを通りかかれば、無意識のうちに探している自分に気づく。

それにつけても、人はなぜ探そうとしてしまうのだろうか。垣根越しの静かなたたずまいのなかに、こんもりと茂った1本のキンモクセイの木が見える。ああ、あそこの家のあの木だったのか…。

キンモクセイは、硬い葉の付け根に、十字形をした小さな黄橙色の花をたくさん咲かせる。中国原産の常緑小高木で、大きいもので高さ4〜5mになる。日本への渡来は、江戸時代からといわれている。雌雄異株なのに、日本にあるのはなぜかほとんどが花付きのよい雄株ばかりだという。雌株の花と実はまだ見たことがない。

この花の花言葉は「謙遜」。魅惑の香りで誘っておきながら、どこが? と言いたいが、甘い香りの花の時期でなければ、この木はほとんど忘れ去られている。

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