チカラシバ【力芝】


 東京都東村山市・11月撮影

 

ブラシの穂が輝く

初冬の午後、やわらかな陽射しを受けてチカラシバの穂が輝く。野原や道ばたのかたい土を好むかのように生い茂り、夏から蓄え続けてきたエネルギーを、いま無数の小さな実に輝かせる。
びんを洗うブラシのような穂は、なんともおもしろい姿をしていて、子供たちの格好の遊び道具になる。でも、この草、引き抜こうと思っても、容易ではない。茎はけっこうかたいし、根ともなればしっかりと地面に張り、ちょっとやそっとの力では引き抜けない。そのため、“力芝”の名がついたという。

そんな草むらでひとっきり遊べば、気がついたときにはズボンの裾やセーターの袖口に、それはびっしりと小さな実がくっついている。後から取り除くのが、これまた容易ではない。だから、内緒だよ、知らんぷりしてようねと、子供たちと示し合わせて家路を急ぐのだが。家に帰って、見つからなかったことはまずなかったなぁ。過ぎ去ってしまった遠い日の、懐かしい夕暮れのひとこま。

(2000.11.15)

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