イソギク 【 磯菊 】

▲静岡県伊豆下田・11月8日撮影

 

 初冬の海岸を彩る

11月も半ばを過ぎると、野山はいっせいに冬じたくを始める。時雨が紅葉を散らせ、野は枯れ、山には根雪が積もる。目立った花はもう見られない。

そんな季節に、関東から九州までの暖国の海岸では、晩秋から初冬の海岸に咲く花が真っさかりになる。ツワブキ、ハマギク、シオギク、イソギクといった、黄色や白い花を咲かせるキク科の仲間が、晩秋から初冬の海岸を彩る。

海岸線の地域は、黒潮のおかげで想像以上にあたたかい。風のない晴れた日など、春かと思わせる。でも、ひとたび曇り、冷たい潮風が吹きつければ、寒々とした冬の海岸に一変する。

イソギクは、千葉県大吠埼から太平洋岸にそって静岡県御前崎まで分布する。一方、花がよく似たシオギクは、徳鳥県東端の蒲生田崎から太平洋岸にそって高知県物部川まで分布する。いずれも、海岸の崖や岩の上を黄色で埋めつくすように、よく群落をつくって咲く。

写真のように離れて咲く一株は、生態としてはあまり一般的ではないのかも知れない。しかし、よくぞこのようなわずかな岩のすき間に根をはり、潮風を受けながらも精いっぱい花を咲かせたものである。
そんな一株は、やはりどうしても写しとめておきたい姿のようでならなかった。

*

一覧へ

inserted by FC2 system