ノリウツギの枯れ花 【糊空木

▲長野県八ヶ岳美濃戸口・12月撮影

 

 ちょこんと雪の綿帽子

雪国の人にとっては、雪が降り始める12月は気の重い時期だという。また長い雪との闘いが始まるからだそうだ。
しかし、暖かい地方の人 にとっては、雪は景色を一変させ、気分をなぜか高ぶらせてくれる。楽しい冬の使者でもある。
野山に雪が積もるころになると、雪国の人の気持も知らず、また出掛けて行く。

林のふちのノリウツギの枯れ花が、雪の綿帽子をちょこんとかぶっている。
自然がつくるひとときの雪の造形は可愛らしく、いつ見ても巧みである。

ノリウツギは、夏の山でアジサイを円錐状にしたような白い花を咲かせる。甘い香りが漂い、花の蜜を求める蝶や虫たちがしきりに集まる。花は虫たちの絶好の食卓となる。真夏の強い陽射しを受けながら、虫たちはただ無心にむさぼる。

そんな光景がまるで嘘であったかのように、ノリウツギの花は静かに枯れている。
花が終わっても、枯れても、それでも枝先に執拗にしが みついている。執念さえ感じる。

そんな枯れ姿に、自然はひとときのプレゼントを忘れない。
清楚な純白の花でも、旺盛な生命力を惜しみなく与えたノリウツギには、いま白い雪の綿帽子がよく似合う。

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