ゼニゴケ 【銭苔】


 東京都東久留米市・12月撮影

 

おとぎの国の“樹氷”

例年に比べれば、暖かい12月のように感じていたが、さすがに朝晩の冷え込みは厳しくなってきた。

冬の朝は、枯野も畑も人家の屋根も、白い霜でおおわれる。朝日が射し始めると、あたり一面がキラキラと輝き出し、ひとときの銀色の冬景色を見せてくれる。
霜がおりるのは、朝夕の百葉箱の気温がおよそ4℃以下になるころからだそうだ。でも、霜がきれいにおりている寒い朝は、決まって晴れた風のない静かな日のような感じがする。
霜は地表面近くの空気中の水蒸気が冷やされ、地表付近の物に直接氷の結晶となって付着してできる。どんな小さな物にも、霜は忘れずにおりる。足元に枯れ残った小さなゼニゴケにも、きれいに霜がおりていた。

ゼニコケは湿気の多い場所なら、どこにでもよく見られるコケで、開いた傘のような雄株や破れ傘のような形の雌株(写真)が無数に乱立する様子は、ちょっと気味悪くも見える。でも、この写真のように、霜のおりたようすをクローズ・アップしてみると、おとぎの国の小さな“樹氷”といった感じ…。
そんなメルヘンの世界にいざなってくれたゼニゴケの霜も、朝日が当たり始めると、意外にはやくとけて、消えてしまう。そして再び、冬を越す寒々しい植物の姿に戻る。

(2000.12.11)

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