冬の川



長野県茅野市 美濃戸 ・1月撮影

 

流れる

冬の川は、ふしぎな生き物のようだ。水は、凍てつく寒さに抗い、そこにとどまることなく流れる。

流れるものは強い。不定形のものは潔い。いつも己を瞬時にして捨てているから。
雪のおだやかな表情にも、氷の鋭い理性にも、もはや見向きもしない。だから、優しさに惑わされることもなければ、合理に縛られることもない。
ただ、ひたすら流れ続ける。流れるように流れ、あるように在り、それ自体に身をまかせている。

流れるものは強い。動いているものは美しい。すでに白い血縁と決別しているから。いや、いずれお前たちもここを流れ下るであろうことを知っているからか。

流れる水は、強い。冬の川の流れを見ていると、否応なくそう思う。

水はこの地とこの身体の宝だ。私たちはそれなくして生きていけない。
川は、たえず川音を奏で、ときにはうるさいくらいにうなり、そのことを伝えようとしているかのようだ。川の音があたかも流れる水の守り神であるかのように。

(2002.2.8更新)

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