結婚式





千葉県浦安市舞浜 3月18日・撮影


幸多かれ

娘が結婚式を挙げた。すべて自分たちで進め,私はお金も口も出さずに,ただ花嫁の父を演じに行けばよいだけだった。
雲ひとつない晴天に恵まれ,朝の京葉線の電車からは,真っ白な富士山がはるかに望めた。まるで北斎か広重の絵のようだった。感極まっても,泣くのだけはやめにしておこうと決めていた。たぶん泣くことはないだろうとも思っていた。涙など,とっくに一生分使い果たしたと高を括っていた。
気楽に臨めたのに,私は最初からなぜか奇妙に緊張していた。そして披露宴のしめくくり,新婦からご両親様への感謝の手紙で,花嫁は第一行目を読み出したとたん,もう涙,涙,涙…,特別なことは書いてなかったが,私には複雑な思いがあった。長い歳月のさまざまな出来事がわずか数秒の二言三言に凝縮され,私に去来した。生後3ヶ月から保育ママさんに預けて出勤することが多かった子だった。不覚にも熱いものがこみ上げてきてまった。じっと上を向いていたが,ついにこらえきれなかった。うれしい涙は,別のところから出てくるようだ。
会場はお約束通りの“うるうるモード”に一気に突入していった。ほとんどの人が泣いていた。
本当にきれいな花嫁姿だったよ。愛されている幸せと自信に満ちあふれ,輝いていた。多くの人に祝福され,すばらしい結婚式だった。3人の子供の中では,いちばん心配していた娘が,意外にもいちばん最初に良き伴侶に恵まれ,幸せをつかんだ。美しき花嫁に幸多かれ。
(2007.3.21更新)

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