エゴノキ

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 東京都東大和市・5月21日撮影

 

自我の白花

5月は、新緑が日増しに色濃くなる。少年のようなみずみずしさをたたえていた若葉も、ちょっと目をはなしていたすきに、青年の逞しさをのぞかせる。
風は爽やかだが、陽射しは意外に強い。そろそろ緑陰がこいしくなる。木陰の道を歩いていくと、あたりがぱっと明るく感じられることがある。はたと見上げると、エゴノキの白い花が、枝一面に咲いている。
5つに深く裂けた白花が、いやというほどたくさん垂れ下がっている。見事としか言いようがないが、少々過ぎた気がしないでもない。白花だからまだ救われている。
見とれていると、ミツバチやクマバチが花から花へとせわしなく吸蜜していく。もう、初夏なんだ。これからが季節の盛りだというのに、5月の緑陰には、どこか悲しいにおいがする。青春にも似ている。なぜか不吉な思いがつきまとう。
花は、1週間もすれば音を立てるように散り、木の下は一面の白いじゅうたんになる。
夏から秋には、細長い球形の実が鈴なりにぶら下がる。この実の皮が有毒のサポニンをふくみ、えごいことからその名がついたという。エゴイストとも自我とも、なんにも関係ない。

(2000.5.16)

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