ノハナショウブ 【 野花菖蒲 】


山梨県南巨摩郡 ・6月30日撮影

 

花菖蒲の原種

アヤメやカキツバタはよく知られていても、ノハナショウブという花の名は、あまり耳なれないのかもしれない。花菖蒲は日本独特の園芸植物で、その豪華絢爛たる美しさには驚かされる。500品種をこすという千変万化の花菖蒲の原種が、この写真のノハナショウブである。

6月から7月ころ、野山の草原や湿地で、アヤメの仲間ならではの赤紫色の花を咲かせ、群落をなすこともある。大輪で色彩も模様も豊富な花菖蒲は、人工の美を極めつくした感が強いが、ノハナショウブには、やはり昔と変わることのない素朴な野の趣がある。

頂上付近のアヤメの大群落で有名な山梨県・櫛形山の帰り、その山麓でこの花に出会った。やぶの向こうの紫色にひきつけられるように目をやると、そこには忘れられたように数株のノハナショウブが咲いていた。逆光の中で、紫色の花と細く鋭く伸びた緑色の葉が浮き立った。
それは、一瞬にして目に焼きついた野の初夏であった。

5月の端午の節句にふろに入れ、菖蒲湯に使うショウブという植物は、葉の形こそ花菖蒲によく似ているが、花の形や色が全然ちがう別の植物で、アヤメの仲間とは縁もゆかりもないサトイモ科である。

(2001.5.8更新)

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