シャガ【射干】

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奈良県・5月5日撮影

日陰者にも見事な配色

連休は、紀伊半島の大台ヶ原山(日ノ出岳)と大峰山(八剣山)に登った。帰りに吉野山に立ち寄り、西行庵を訪ねた。欲深くさらに若草山もと目論んだが、東大寺の大仏を23年ぶりに見たところで、陽はすでに西に傾きかけていた。

山の上はまだ花には早く、木の芽がやっとふくらみかけたくらい。所々に雪が残っていた。しかし、山麓や熊野路は新緑に萌え、谷へと切れ落ちた急峻な山肌には遅い山桜の花がけぶっていた。
どの山のふもとでも杉や檜林の縁に、シャガの白い花が群落をなして咲いていた。西日本には、こんなにもシャガの花が多いのかと驚かされた。関東や中部地方の山では、これほどまでには見られないような気がする。林の下の薄暗いじめじめしたようなところに生え、どちらかといえば日陰者のイメージをいだいていたが、なんのことはない、大和のシャガは初夏の陽射しをいっぱいに受け、爽やかな風を欲しいままにしていた。
シャガの花は、やはりクローズアップがいい。純白の花に橙色と紫色の斑点がちりばめられ、清楚なうちにも見事な配色がこらされている。

赤貧街道まっしぐらのオジさんとしては、宿は迷わず道の駅と民宿。でも、北山川沿いの民宿、宿帳の前泊者の日付が3月24日とは、おったまげたぜ。息子がジュース頼んだら、ないからと自分っちうちのペットボトルを持ってきてくれた。デカボトルを半分以上も飲んだのに、精算してみればタダでした。だから、いい宿でした。いや、山菜料理おいしかったです。
2泊目の天川村の民宿は、何も知らずに予約したのだが、かつて吉野杉で財をなした旧家かその別邸とみた。畳はいささかすりきれていたが小綺麗にされ、床の間や付け書院、違棚にまで、いくつもの骨董が無造作に並べられていた。縁側には懐かしい木の雨戸があり、朝夕にがらがらと大きな音を立てて開け閉めされた。だが、廊下側は障子戸だけで小さな中庭になっていた。襖ひとつ隔てた隣室は、ツーリングの若者たちだった。話し声が手に取るように聞こえていた。でも、そういうことは気にしない。料理も懐石風でなかなか手のこんだものが出た。あれで65は、安い。大当たり。家のつくりや調度品が懐かしさをさそういい宿だった。

(2000.5.8)

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