シロバナエンレイソウ【白花延齢草】

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 栃木県日光戦場ヶ原・6月8日撮影 

花の影

山の樹林の下に生えるシロバナエンレイソウは、プロペラのような3枚の葉が印象的で、初夏の山歩きではよく目につく。高さは30〜40cmくらいになる。遠慮がちな白い花は横向きにひとつだけ咲き、何かをじっと見つめているような感じがする。花は何を見ているのだろう。花には自分が見えない。だから、花はつかの間の木漏れ日が映し出したみずからの花の影に見入っているのだろうか。
人も、自分自身は見えない。だからといって鏡をじっと見つめても詮ない。他者の中に自己を見いだすことはしばしばある。ときには敢えてそれを求める。他者への強烈な関心は、自己への果てしない渇望にほかならないのだろうか。でも、そのとき、私の目はすでに私色に曇っている。勝手な思い込みや願望で、都合のよい自画像を日々延々と描き出していく。それはそれでけっこう楽しいだろう。自作自演の物語を生きるようで。
山の樹林の木漏れ日は、つかの間の光。光は花を照らし出し、光は影を生む。影はそれと知らずに花にみずからを見せる。影も鏡なのか。ならば、影も花を見ているのだろうか。もしかしたら、見るということは、同時に対象から見られることを含み、互いに見つめ合うということなのではなかろうか。みずからの影にじっと見入る花の姿を見て、そんな感じがした。光は反射して進むことを忘れてはなるまい。今宵酔いみみずなり〜。       

   (2000.5.23,24)

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