トウゴクミツバツツジ
【 東国三葉躑躅 】



山梨県大菩薩峠 ・6月1日撮影

 

歳月の彼方より心眼に咲く

緑がまだまぶしいころ、大菩薩峠へ向かう登山道でこの花に会った。大菩薩峠のトウゴクミツバツツジの花は、ぜひこの目で見ておかなければと、出掛けたのだった。3枚の葉に先立って咲く赤紫色の小ぶりのツツジは、新緑の山の中で静かに咲き競っていた。
40年以上も昔、ある山小屋の若き主人が、このミツバツツジの幼木を登山道の近くに、せっせと移植したのだという。そんな話を人から聞いた。
歳月は流れ、ミツバツツジの木は立派に育ち、その子孫たちであろうか、いたる所に咲く赤紫色の花は見事なまでに自然と化していた。
初夏の大菩薩峠の山のことや、ミツバツツジの花のようすを、人を介して、かつてのご主人に伝えた。病を得て山を下り、故郷をはなれて40数年。わなわなと身を震わせて聞き入る全盲の老人の目は、すでにひとしずくの涙さえ流すことはできないのだという。歳月の彼方より蘇ったミツバツツジの花を、老人は心眼に写し見たのだろう。
ミツバツツジの花は、決して多くを語らない。

「大菩薩峠」をはやく読み始めねば…。長いぞ。

さて、こんな面白くもおかしくもないHPをリンクして下さった殊勝なかた、ほんとうに、ほんとうにありがとうございます。感謝。

(2001.5.22更新)

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