シロバナヘビイチゴ 【 白花蛇苺 】

 
山梨県南巨摩郡 櫛形山 ・7月撮影

 

甘酸っぱい山の苺

山のやや日当たりのよい草地などで、シロバナヘビイチゴはよく群落をつくる。6〜7月ごろ、赤い実をつけたこの山の苺を見つけたら、迷わず食べてみよう。小粒だが、こくのある甘酸っぱい味が口の中に広がる。野山の苺のなかでは、これが最高の味だろう。
名前は似ているが、春に平地の野原などで真ん丸の実をつけるヘビイチゴは、味も香りもなく、まるでスポンジでも食べているようで、とてもじゃないけど食べられるような代物ではない。
野山の苺は、もちろんその場で摘んで食べるのがいちばんだが、2、3粒を軽くつぶしてウイスキーに入れてみると、トリスがなぜかジョニーウォーカーそっくりの味になる。三十年ほど前に居候していた山小屋では、もっぱらこればっかだった。
小屋から30分ほど歩いたところに、このシロバナヘビイチゴの群落があった。暇で暇でどうしようもないようなときは、よくそこへ行った。当時、その道はほとんど使われていなかったから、まず人の通らない静かな山の原だった。苺を食い飽きると、トリスを取り出してジョニーウォーカーに変身させ、チビリチビリと飲んだ。初夏の風は爽やかに吹きわたり、陽はあふれていた。草の上に寝ころび、うとうとと昼寝した。思い返せば無為徒食、まさに黄金の日々であった。

(2001.6.16更新)

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