トケイソウ【 時計草 】

 
東京都小平市 都立薬用植物園 ・6月撮影

 

 

10時までの時計

6月10日は時の記念日。だからといってどうということもないのだが、「光陰矢のごとし」、「歳月人を待たず」、「時は金なり」、「月日に関守なし」(←くどい)のことわざが身にしみて分かるような歳になってしまった。
それにしても、時はあまりにも速く過ぎ去っていく。ましてや“下り坂”に入ると、加速度的に速くなる。今ごろになって気づいても、もう遅いって…。

さて、トケイソウという名前の花がある。南米原産の蔓植物で、日本では野生の花ではないが、初夏に時計の文字盤に似た花を咲かせる。花の直径が8センチほどもあり、形が奇抜で美しいので、この時期には,園芸店などで鉢植えとしてよく見かける。
花びらのように見えるのは、薄紫色の5枚が花弁で、それぞれの間にある白い5枚はがく片である。したがって、合わせて10枚ということは、この時計草には10時までしか時間がないことになる。時の記念日にはふさわしいのかも知れないが、なんとも切ないことだ。いったいシンデレラはどうすればよいというのか…。帰宅時間に遅れそうになって、きゃー、魔法が解けてしまうわ! どころの話ではない。
予定していた時間がすっぽり消えて無くなってしまうのだから…。そういう事態って、どういう状態なのだろう。

でも、暗黙のうちに約束され、期待の中で予定されていた未来が、予告も前兆もなく、突然はぎ取られるように失われることは、よくあることだ。それは、理不尽で、酷いことだが、確かに起こる。そのとき、失われた未来は、一瞬にして反転し、焼き印のごとき過去となる。未来は、気を許すとよく人をだますが、人がその過去をだませるのは、至難の技のようだ。

(2001.6.9更新)

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