スギ 【  】  2014.7.9更新



東京都八王子市裏高尾町 景信山(ヤゴ沢作業道) 7月8日・撮影



景信(かげのぶ) 【 727 



東京都八王子市裏高尾町 景信山頂上 7月8日・撮影



陣馬(じんば)(陣場山) 【 857 】



東京都八王子市上恩方町 陣馬山頂上 7月8日・撮影



午後登山

朝起きたら、晴れているではないか。しかも青空が顔を出している。沖縄に大型の台風が来ているそうだが、どうなっているのだろう。梅雨の合間の貴重な晴れ間だ、洗濯より山だな。でも、午後から下り坂だそうだから、さてどうしよう。なんて、ぐだぐだ考えながら、残り飯のお茶漬けを一人で食べていたら、いつの間にやら10時を過ぎていた。
とにかく決断力がない。ぐずぐず、だらだら、ああでもないこうでもないと考えている(ふりをしている)だけで、なかなか行動できない。困ったもんだ。愚図で、のろまで、怠け者である。でも、ふと思いついた。そうだ、こういうときは、車で行けばいいんだ。そうすれば、1日遅れになってしまったツタヤのDVDも、行きがけに返せる。
さあ、行こう! 一昨日下山した小仏峠の最終駐車場まで車で行けば、今日はその先の裏高尾や奥高尾の山をまだ歩けるぞ。車なら、帰りのバスも時間も気にしなくてすむ。
よし、行くぞ! と出発。決まればはやいのである。ちなみに、ツタヤのDVDは返却日が過ぎても、翌日の正午までは超過料金がかからないそうです。
カウンターの女の子が、ニコニコしながら「ゼロ円ですよ〜」と言ってくれた。ラッキー! これは幸先がよい。では近道しよう。
なんて調子に乗ったのが裏目に出た。なんせカーナビが付いていない。携帯も電話とメール機能だけ。おまけにろくな地図も持ってない。ひたすら、動物的方向感覚で進むだけである。普段の生活ではあまり車を使わないから、地理にも疎い。もうはっきり言って、出たとこ勝負のデタラメドライブである。
だが、最近はよくしたもので、コンビニという便利なものがある。弁当とお菓子とポカリを買って、トイレを借りて、なにげに道を尋ねる。これで結構いける。店のほうとしては、こういう老人が増えるばかりでは、たまったもんじゃないだろう。まあ2度ほど道がわからなくなったが、何とか目的地の小仏峠近くの駐車スペースに着いた。時刻は12時過ぎだった。
駐車場に軽自動車の野菜売りが出ていた。ちょうどその隣しか空いていなかったので、のぞいてみた。物静かそうなおじいさんが、「朝取りの完熟トマトだよ」と言った。食べ物は例のコンビニで充分買ってきたから特に必要はなかったが、なんとなく買おうという気分になっている自分に気がついた。オレもずいぶん優しくなったというか、大様になったなあと思った。2個入り1袋を、「150円でいいよ」と言ってくれた。二言三言ことばを交わしてから出発した。

小仏峠バス停より少し上にあるこの駐車スペースからヤゴ沢作業道に入り、小仏峠は経由しないで直接景信山へ登る。このコースは、はじめは沢筋だが、後半は山の斜面のジグザクの急登になり、約1時間ほどで頂上に着く。
ずっと杉林の中だが、よく手入れをされていて、スギが見事に成長しているので、写真になる。特に胸も苦しくならず、景信山の頂上まで登れた。
茶店のベンチで景色を眺めながらコンビニ弁当を食べ、ゆっくり休んだ。茶店は平日だからか、一軒も営業していなかった。
尾根伝いに奥高尾の陣馬山まで行くつもりだったが、迷った。時間的にチョットきついような気もした。このコースは初めてだった。行きも帰りもコースタイムは2時間10分になっている。これより余分にかかることは間違いないが、これを基準に、日没までに車に戻れることを絶対条件に時間を逆算してみると、陣馬山の頂上に4時20分までに着けなかったら、ダメである。
腕時計をとにらめっこしながらいろいろ考えた(ふりをした)。時間的には行けそうだが、まあ、何があるかわからないからな…。でも、ここで帰るのはもったいないしな…と、また始まった。まあ、行けるところまで行ってみることにした。
登山道は比較的なだらかな尾根道だが、まわりに杉林が多いから、巻き道の作業道がかなりある。でも、知らない者にはそれがピークの巻き道なのか、杉林の中へ下りていく作業道なのかよくわからない。だから、行きは巻き道を使わず、真面目に尾根伝いに登り下りすることにした。
送電鉄塔、堂所山(731m)、底沢峠(721m)、明王峠(茶店あり)、奈良子峠を経て、なんとか陣馬山857mの頂上に着いた。時刻はちょうど4時20分。ぎりぎりだった。
だが、それより、頂上付近に立ち並ぶ茶店と白い馬のモニュメントを見たとき、ぬぬっ? はて? 待てよ? あれっ〜! この山は来たことがある。この頂上はなんか見覚えがあるぞ。うん、確かに来たことがある。でも、それがいつだったか、どうも思い出せない。かなり昔、20歳代の頃だろう。登山ではなく、遊びに来てそのまま頂上まで登ってしまったようなことだったろうか。だから、たぶん陣場高原のほうから登ったような気がする。でも、どうもはっきり思い出せない。イヤになっちゃうよ。自分をやめたくなるよ。ホント。
頂上に人は一人もいなかった。茶店も一軒もやっていなかった。夕暮れが近づき、雲行きも怪しくなっていた。
自分をやめるのはやめにして、さっさと来た道を引き返すことにした。帰りは、来るときにしっかり見てきた巻き道をすべて使って楽をした。時間もだいぶ短縮できた。雨には降られなくてすんだ。
でも、鬱蒼と繁った杉林の中には、夕闇がみるみるうちに下りてきた。下りでは、人には誰にも会わなかった。時間と追いかけっこするように下った。駐車場に着いたとき、まさに日は暮れかかり、薄暮が山間によどみ始めていた。時刻は6時50分だった。あぶねえ、あぶねえ…。
(2014.07.09〜17更新)




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