山梨県 南巨摩郡 9月撮影
2003.10.1更新)
“成熟”の茜色少年の日、秋の夕焼け空に飛びかう赤トンボの大群をはじめて見たとき、思わず「すごい」と声を上げた。あたりから、どこからとも知れず不思議な音が聞こえていた。シュッシュッとでもいう、かすかなささやきのような音。それは無数の赤トンボの羽と羽がぶつかりあう音だと、今でも信じている……。しばし見とれた少年たちだったが、すぐにまたメンコやビー玉に夢中になっていった。そんなさりげない自然とのふれあいが、今ではとても懐しい。
赤トンボといっても、ヤゴから成虫へと変身をとげた6月ころは、その体はむしろ黄色に近い。それが、暑い夏を高原で過ごし、再び故郷の平野にもどると、茜色の秋の夕焼けに染め上げられるかのように赤く変化していく。ことさら雄の体の赤色は鮮やかで、まさに成熟の色とでもいえよう。
写真の赤トンボはミヤマアカネという種類で、どちらかというと山生まれの山育ちだが、故郷が平野のアキアカネなどに負けぬほど鮮やかな茜色に身を染める。(
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