ヒロハツリバナ 【 広葉吊花 】
長野県川上村 甲武信岳 ・10月25日撮影
有終の美
山での落葉は、平地に比べたら、ことのほか早い。霜の降りるよく冷えこんだ朝、日が昇ると、色あせた葉はいっせいにはらはらと散っていく。その光景は切ないほどに美しく、なんともやるせない。
でも、実をつけた木は、それから静かに有終の美を飾る。ツリバナもそんな木のひとつ。
黄葉のころは球形の赤い実だが、熟すと実は裂け、中からきれいな朱色の種子をのぞかせる。葉の散った枝につり下がる実の色と姿には、落ち着いた趣がある。初夏に目立たぬ薄緑色の小さな花をつけたツリバナだからこそ、深まりゆく山で秋から初冬に、朱色の実と種子が映えるのだろう。
ふつうのツリバナは、実が熟すと5裂し、翼がないが、このヒロハツリバナには平たい翼があり、熟すと4裂する点で区別される。(2002.11.29更新)