カエデ 【楓、蛙手】 

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京都市東福寺・11月撮影

錦に染まる東福寺

紅葉前線が、北から南へ、山から街へと下りてきた。
都心でも、やっとイチョウやサクラが色づき始め、秋も深まってきた。そう思っていたら、はやくも葉は冷たい雨に打たれ、はらはらと散り始めている。初時雨にしては早いのだろうが、「……時雨ぞ紅葉散りにけり」か。

京都駅からいちばん近い紅葉の名所とすすめられ、東福寺に立ち寄ったことがあった。寺や神社などのいわゆる紅葉の名所という所は、それまでほとんど訪ねたことがなかった。だから、気楽にちょっと寄って写真でも撮ってみるつもりだった。
ところが、その日の朝は、どこでどう間違ったか、はずかしながら、近年にしてはまれにみる強烈な二日酔いだった。前夜がいささか過ぎたご様子。おまけに京都は秋の観光シーズンのピークとあって、電車も東福寺も、身動きもとれないほどのすごい人出。まさかそこまで混雑するとは思いもよらず、気楽に出掛けたのが甘かった。かくしてわが人生最悪の踏んだり蹴ったりの1日になってしまったのだが…、紅葉の写真は一応撮りました。
東福寺には、大きくて悠としたカエデの樹が多く、それだけに枝ぶりも見事だった。種類も豊富で、葉が天狗のうちわのような形をしたオオイタヤメイゲツやハウチワカエデが多いのも意外だった。

禅寺もこのときばかりは錦に染まり、雑踏と化していた。そんな喧騒をよそに、私は簀の子に座り込み、ただ茫然と枯山水の庭をいつまでも見つめているだけだった。

 道しらばたづねもゆかんもみぢ葉をぬさとたむけて秋はいにけり

(『古今集』 凡河内躬恒)

(2000.11.20)



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