ムラサキカタバミ 【 紫傍食 】


東京都新宿区 7月14日・撮影


東京都新宿区 6月1日・撮影




今日5月2日は,母の命日である。生家の玄関先の花壇のふちや垣根の下に,この草がびっしりと生えていた。母に,この草の草取りをやってちょうだいとよくいわれた。根っこの玉で増えるんだから,根からぬかなきゃだめだよと念おしされたが,だいたい上の草だけむしり取って終わりだった。「やったよ〜」と言って,後は要領よく逃げていた。母は指先の汚れるのを嫌っていたが,この草は取っても取っても増えるんだからと,まるで愚痴か繰り言のようにぶつぶつ言いながらやっていた。そのころ母はまだ30代だったと思う。いつごろだったか,母がはじめて透明なマニキュアを爪にぬったときのことを横で見ていて,よく覚えている。早めに台所の水仕事をおしまいにし,ムラにならないようにゆっくり丁寧にぬっていた。そして指を開いたまま何度も何度もながめながら乾かしていた。そうだ,はじめてパックというものを顔に塗ったときは,それは大傑作だった。笑わせたら絶対だめだからねと,言いながら,結局自分から笑い出してしまい,全部やり直しになったりした。母にもそんな頃があったのだ。亡くなった年,母が丹精こめて育てていた芍薬が,それは見事にたくさんの花を咲かせ,みんなを驚かせた。


シャクヤク
(2008.5.2更新)


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