鳥の名をもつ南紀の“貴婦人”
秋の山野草として有名なホトトギスの仲間には、花の色が紫色系と黄色系がある。花の内側にある紫色の斑点が、鳥のホトトギスの胸毛の模様に似ていることからその名がついたという。 キイジョウロウホトトギスは、紀伊半島南部の湿り気のある渓谷の岩壁などに自生し、9月下旬から10月中旬に、釣り鐘形で鮮やかな黄色い花を咲かせる。花の大きさは4cmくらいで、茎の先と葉のわきに1個ずつ垂れ下がるように咲く。名は、そんな優雅で気品ある姿を、上臈(貴婦人)にたとえている。 最近は、乱獲や環境変化によって少なくなり、レッドデータブックの絶滅危惧U類に載せられている。ところが、和歌山県すさみ町では保護と増殖が進み、そのおかげなのか各地の植物園などでも、秋も深まるころになると、意外によく見かける山野草となったから、かえって皮肉なものだ。 |